時代に左右にされない普遍性を持ち続けること。今を生きるクリエイターにとってそれは容易なことではない。現代の殺人的な情報量とスピード感のなかでINO hidefumiというミュージシャンはブレのない、希有な存在だと言える。
恵比寿3丁目交差点近くに位置するカフェ「Tenement」。彼はこの飲食店を経営しながら、1レーベル 1アーティストというコンセプトで「innocent record」を主宰している。30歳の頃に福岡から上京し、レーベルを立ち上げるよりも先にまず、彼はカフェをオープンさせている。それは「自分の居場所をつくるため」だったから。“今、自分はどこにいるのか?” “どこにいるべきなのか?” 拠点を持つことで、ミュージシャンとしての立ち位置は明確になるのかもしれない。そして、恐れることなく変化することができるのかもしれない。拠点とは、帰る場所であり、戻る場所なのだ。
楽曲創作のインスピレーションは?ーーそんな問いに対して彼は「音楽を生み出すインスピレーションは、かならず“音楽”でしかない」と答える。“僕には音楽しかないんですよ” そんな彼の言葉を聞いて分かったことがある。CDのジャケットからポスターまで、楽曲にまつわるアートワークを自ら手掛け続けるセルフ・プロデュースへのこだわりやカフェの経営等。多岐に渡るINO hidefumiの活動すべてが、自分の音楽を自分の手で守っていく手段なのだ。照れながらも、「大変ですよ(笑)。メリットなんてない」と彼は言った。それでも、彼の音楽の核のところは揺るぎない。音楽家としてそれこそが一番のメリットではないだろうか。
INO hidefumi:www.innocentrecord.net/